2011年7月17日日曜日

次年子 大石田そば街道 七兵衛

世に蕎麦好きは多い。
だが、今回のタイトルとした『次年子』や『大石田そば街道』、『七兵衛』などと聞いて、その場所や店をわかる方は少ないと思われる。
もしご存知であれば、かの地に何かしらの縁をお持ちの方か、かなりの蕎麦に詳しい方とお見受けする。

                                               

ある人からの強烈なレコメンドがあったため、そば街道の蕎麦屋の一軒である『七兵衛そば』に行ってみた。
場所は、山形県北村山郡大石田町次年子266 、である。
ちなみに『次年子』は『じねんご』と読む。(現地での発音はどのようなものかは不詳だ)
参考 →  七兵衛そば

七兵衛そばの店の入り口で順番を待つ人々
到着時刻が11:30(開店は11:00)であったこともあるが、既に入店の番号札は57。
山間の一軒家の前には大勢の人がたむろし、入店を待っていた。
周囲はどちらを向いても山で、その間の低地の道路沿いに若干の田んぼがある程度。
いたって静かな山村の風景であるが、ここだけが異様な人口密度で、まったくもって奇異な光景となっている。
店は高台の旧道沿いにある
周りは山山山山・・・
一番近くの人家はどこだ?という感じだ
入店待ちの客50人以上が外で待つ。
すでにこの状態だが、この後も続々と車やバイクが到着する。
この状態を見て引き返す車も多数ある。
連休中日ということもあるだろうが
すごい人気だ
車のナンバーを見ると、山形は当然一番多いが、宮城・新潟・秋田・福島・いわきなどさまざま。中には品川や練馬など東京地区ナンバーも見受けられた。

結局待ち時間1時間、12時30分にやっと入店できた。
炎天下、皆さん本当に我慢強く待っていらっしゃる。
それだけここの蕎麦を食してみたいという気持ちが強烈なのだろう。

店内というか家の中は、厨房を除くと全く普通の民家で、8畳一部屋、10畳3部屋の4部屋(すべて襖を取り払い、大広間状態)に長テーブルを置き、客には畳みに座ってもらうスタイルである。
全60席程度であろうか。
玄関を入ると、すぐさま厨房が見え、片隅で男性がひたすら蕎麦を打っている姿を目の当たりにする。
いかにも手打ちですよ、とのアピール性は十分な演出だ。
玄関を入ると受付があり、その横で蕎麦を打っている。
奥は厨房になっている
厨房内では、女性主体で5〜6人が働いている。

満席の店内を慌ただしく配膳の女性が動き回る。部屋ごとに担当が決まっているらしい。
指定された相席のテーブルに着くと、まず最初に付け出し的な3品と、大根おろし汁、薬味の刻みネギ、蕎麦つゆが出される。
手前が薬味の刻みネギ
左から、キュウリ浅漬け、酢漬けキクラゲの辛子添え、ワラビの醤油漬け
ここは冷たい蕎麦のみの単品商売である。
天ぷらや汁物などはない。
かつ大人1050円で食べ放題の単純明快なシステムである。

その日によって出される付け出しの品は違うらしいが、今日はキュウリの浅漬け、ワラビの醤油漬け、酢漬けキクラゲの辛子添え、である。
それぞれが味わい深く、旨い。
これらの自家製漬け物を味わいながら、蕎麦が出てくるのを待つ。
出てくる蕎麦は、木製の大きめのお椀に入った、いわゆる田舎蕎麦である。
殻が少し混ざった灰色かがったもので、急いで手打ちしているらしく、長さ太さはバラバラである。
歯ごたえも十分ある太めの麺だ。
この蕎麦を、辛み大根おろし汁をカツオ出汁が効いた蕎麦つゆで割った汁に浸けてたぐる。
辛みの効いた汁が心地よく、喉ごしよく蕎麦が進む。
お椀が空いた頃を見計らって、タイミングよく給仕の女性がおかわりの蕎麦を配膳してくれる。
一杯の量は一般的な街の蕎麦屋が出すせいろ一枚ほどだ
なにしろここの店の特筆すべきポイントは食べ放題である。
自分のペースでおかわりの蕎麦を頼める。
周りを見ていても、大抵の男性諸氏は3杯、女性が2杯、といったところだろうか。

(蕎麦の前に出てくる漬け物)+(蕎麦2杯→腹一杯の満足感)+(店の場所・雰囲気) > 1050円、ということで元はとって帰れるという意味で満足度が極めて高いのだろう。
リピーターが多いというのもわかる気がする。

入店から退店まで30分ほど。
これだけ混雑しているため長居する人はいない。
顧客回転は早い。

                                               

なぜ、わざわざ茨城県からこのような山形県北部の山間地まで出かけ、炎天下1時間も並んでこの店の蕎麦を食したか?
その答えは、簡単である。
この、『田舎の古い民家で、畳に座って、いわゆる手打ちの田舎蕎麦を、前菜的な漬け物を楽しみながら、食べ放題で』食べてもらうという、『田舎の古民家蕎麦屋・食べ放題』スタイルの蕎麦屋が、わが茨城の地元でも展開可能ではないかと考え、構想を固めるべく視察を兼ねて出かけたのである。
厨房の広さや施設、サービス内容、働く人たちの動きなどを、つぶさに蕎麦を待つ間に観察した。

                                               


どんな山深い田舎であっても、口コミで『あそこの蕎麦は良かった』という評判が定着すれば、距離に関係なくお客さまは来てくれるという事実。
どんな暑い日であろうと外で一時間以上待ってまでも食べる、という事実は、驚くべきものであった。                                               
この事実がそのまま茨城で通用するかどうかはわからないが、十分に参考となるビジネスモデルではある。
店内の造作にはほとんど手を加えず、ありのままの民家の雰囲気を楽しんでもらう。
(食事を提供する上で保健所の認可をとるための厨房・トイレ設備だけは別だ)

あと何回か当地に通って違う店にも立寄り、その蕎麦の味含めて運営システムを比較してみたいと思う。

常陸大宮近隣も常陸秋蕎麦の主力産地である。
東京に近いという地の利もある。
このようなスタイルの蕎麦屋も面白いかもしれない。
いつかやってみたいと思う。
長期的な目標ができた。

                                               

なお、小生は蕎麦お椀3杯でギブアップしてしまった。


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