2011年11月3日木曜日

TPP

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)についての議論が囂しい。
いろいろなひとが、それぞれの立場で賛否を主張している。
新聞等の報道によれば、与党も野党も党内で意見がまとまっていないらしい。
であろうな、そのはずだ。
対象分野があまりに広い協定である。
影響は全業種にわたる。
議員さんたちには、それぞれの支持基盤がある。
自身の考えもあろうが、支持してくれる地域や団体の意見も議員である以上また大事だ。
すべての人が、業種が、なべて満足できる選択肢は無いのかもしれない。
難しさのもとはここにある。
こと農業においては、前農相が離党まで覚悟して反対の先鋒に立っていると聞く。

だが、TPPで改めて騒ぐまでもなく農業はこの問題が起こる前から高齢化問題や人手不足で斜陽産業化しているのは周知の事実だ。
かつての政権が莫大な補助金を出しつつ支えてきたものの、その衰退はご覧のとおりだ。
                  
いま我が家の周囲を見ても、長期的な展望が開けている農家などは見当たらない。
『〜が〜だから(農業の将来は)駄目だ』という愚痴ばかりが出てくる。
対処のしようがない、というのがこの周辺の多数を占める小規模兼業農家の偽らざる姿といえるだろう。
自由化の波、というのはこのような田舎の農家にも確実に押し寄せて来ている。
そしてTPPが実現すると、ますますこの農業離れは加速して行きそうな気配だ。
農業県である茨城全体もそうだが、この常陸大宮市周辺も米作を中心に成り立っている。
主たる産業は『農業』それも米作と言ってよい。
農業がいっそう斜陽化すると、社会全体・地域のコミュニティがギクシャクしてくるのでは無いかと危惧している。
つまり、農業の魅力が薄れる→生活の基盤たる農業を放棄する人が出てくる(次世代の子供に農業を勧めない)→農業をやめる→農地が荒れる→ますます農業をやり難くなる→風景が荒れる→魅力のない街になる→定住する人が減る→・・・・・
                  
農業は他の産業に比べて、数字に表れ難い部分の意義が大きい。
環境保全の意義、「食」の安全保障の意義、食育の問題、などなど。
GDPに対する生産高が何%だ・・とか、一人当たり生産高が・・・とか、売り上げ規模が・・・とか、これらの数字などはあまり意味がないと思う。
まして他国比較はほとんど意味がないだろう。
ことは人が生きて行くために不可欠な『食』に関わることである。
農業が崩れると生産現場であるその地域・農業現場に限らず、日本人全体のコミュニティや精神的な影響としていずれ現れるのではないかと思っている。
当然ながら、いろいろな考え方はあると思う。
         
農業基本法の制定以降、職種を絞って規模を拡大する政策が取られてきた。
農水省では農地を集約し大規模化して、その農家に対して補助を集中し支えるという政策をとった。
これもひとつの考え方ではあるが、この茨城北部、とりわけ常陸大宮市の大部分を占める中山間地域などは面積を広げようにも広げられない現実がある。
先祖も苦労したであろう山間の田んぼは地形に沿った見事な曲線で囲まれ、それぞれが狭い。
故に地形を最大限利用し、自然環境を活用しながら農業をしてきたのである。
         
どう転んでも政府の目指す大規模化による効率化・コスト削減は無理な地域なのである.
農業は本来、多様なものなので、多様性を認める農業政策があっても良かったのでないのか、と思う。
もっと地域の独自性を認め、特色ある活動をする意欲ある農家をこそ支援してくるべきであった。
そして、農家自信も補助金の甘えを捨てて、駄目だ駄目だと出来ないことを嘆くのではなく、精神的にも経済的にも自立する道を進むべきだったのだろう。
                  
では、この現状を認め、これから何ができるのか。
難しい問題である。
ではあるが出来ない話ではないと思う。
貧弱な我が知識で考えたところでは、今後の可能性として従来の大規模化は到底無理であるから、むしろ、(この地域でできることは)農業そのものの付加価値を高めていくこと、農家が自分自身で加工してみること、さらには消費者と交流する農業を目指すことが、このような地域で農業に残された途ではないかと思う。
我々農家が、都会にはない農村の価値観と癒しの場を提供すると言う形で、都市や消費者と連携していくことが取りうる道なのかもしれない。そうすることで農村に人が入ってくる可能性が見えてくるのではないかとも思う。
農家自身ももっと情報発信して行く必要がある(残念ながら、この点が弱かったといわざるを得ない)。
地味ではあるが、地域の消費者・お客さまと向き合い、かつ都会の人たちを積極的に呼び込む努力をするのである。
楽しんでもらえる地域農業の姿をつくる。
魅力ある農業、地域づくりを目指のである。
ここに、我がファームが生産者と消費者を結びつける農業を目指す理由がある。
この考えはいろいろな方が既に提唱している考え方で、実践されている地域も多い。
                  
TPPは、もし始まったら何が起こるかわからない。
今でさえ、農村部では高齢化あり、後継者不在、茨城でも原発事故による放射性物質の問題がある。
そしてTPP。
個人的には、TPPに賛成でも反対でもない。
正確には、どちらが将来の日本、この田舎にとって望ましい姿になりうるのかよくわからないというのが本音である。
ただ言えるのは、無条件の自由化は(おそらくは農地やコミュニティーの)破壊でしかないということだろう。
このいわば幕末の開国並の大転換を受け入れる農村部の大多数の人々は、意識の転換も体制の整備も進んでいない。
日本に安いコメが入ってきて、このあたりの高コストのコメ生産農家が兼業や赤字になり廃業すれば、田んぼが荒れて人の心も荒れた地域社会になるかもしれない。
いやそうなるだろう。いま既にそうなってきている。
やはり解決のカギは生産者と消費者のつながりであり、農村と都市のつながりではないか。
そして、もっとも大事なのは農家の意識の大転換であろう。
反対ばかりではダメで、農村と都市部がつながる努力をしていかないといけないと思う。
農地をきちんと耕し農業を続けるということは、多種多様な意味合いがある。
単なる自由化は『破壊』でしかない。
農の環境が壊されてしまっては遅い。
一度荒れてしまった農地は大変なことになる。
ゆめゆめ忘れることなかれ。
                  
TPPが、Tamagawamura Pikapika Project(玉川村ピカピカ プロジェック)だったら良いなと。。。
我がファームのヒマワリの種も、菜の花の種も、よろこんで提供するのに。

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