2011年5月15日日曜日

植えつぎ

田植えをして約2週間ほどが経過している。
この間も毎日のように水田の水量を様子見して、放出と注入を作り返している。
適度な水量が稲の生育に何よりも大切である。

水量の見回りの都度、苗が泥に定着しなかった箇所や水没して枯れてしまった箇所などに、予備を植え込んでゆく作業を続けている。
この予備苗の補植作業を『植えつぎ』と呼んでいる。
「つぎ」は、はたして「接ぎ」なのか「継ぎ」なのか「次ぎ」なのかは分からないが、とにかくしっかりと苗が植え込まれていない場所に補って植える作業を昔から当地ではそう呼んでいる。

最高気温が25℃を越える日も出てきて、田の水温も上がってきている。
稲の苗の分結も進んでいるようだ。この時期を逃すと「植えつぎ」する苗の根付きも遅れる可能性がある。

今日は快晴。
この機をとらえて、改めて全面的に『植えつぎ』を行った。
植えたはずの苗がない場所がある
水没して枯れてしまったようだ


この時期の田んぼの水中には、小さな生物(ミジンコのようなもの)が大量に生息する
またドロドロした藻も発生する
水温が上がってきた水田は、稲にとっても最適な環境であると同時に、生き物の楽園でもある


田植えして2週間の田んぼ
畦の草もまた背が伸びた。あと数日後には再び草刈が必要だ
このように、田植えした後も、延々とメンテナンスが必要な農作業=稲作である。
99.999%はしっかりと植えられているが、残りの0.001%のために「植えつぎ」を続けるのである。
この作業による数百本を植えたところで、全体に占める割合も微小であり、限界的な増量は知れている。
現代の経済学的分析においては、投下した労働力・時間に対して得られる経済的価値は極めて少ない「植えつぎ」に経済的合理性はない。
「不合理、あるいは非効率な行動」の最たるものだろう。

不勉強であるため知らないだけかもしれないが、大型の田植え機で田植えを行っている大規模水田農家では、もしかしたらこのような「植えつぎ」は行っていないのかもしれない。
そこではおそらく不可能なはずである。むしろこのような手間のかかる部分・作業を思い切って排除し、大規模・効率化させているはずであるから。
厳格なまでに経済合理性が追求されているはずである。

一方の我が田んぼのような小規模であるからこそできる作業「植えつぎ」である。
経済合理性よりも、やはり優先する情緒的な部分がある。
せっかく育てた苗であり、長い時間と手間をかけて整えた田んぼであるから、植えたいと思うのである。
稲に対する愛情とでもいうべきか。
とにかく「植えつぎ」したくなるDNAが身体に染み付いているのである。
このように手間隙と愛情をかけて稲を育てているのである。
だから、我々は米を大切にする。
だから、ご飯を残す、などということは決してすることはない。何しろ一年の汗と努力の結晶であるから。

レストランなどで、平気で食べ物を残す人たちがいる。
悲しくなる。残念でならない。
料理がその食卓に供されるまでに、どれだけの人が関わり、どれだけのそれぞれの苦労が詰まっているかに思いが至らない、きっとかわいそうな人たちなのだと思う。見えないものを想像することができない人なのだろう。

水戸藩第9代藩主である斉昭は『農人形』を作らせ、農民の労に感謝して、毎食膳に人形が抱え持つ笠の中に一箸の飯を備えたという。あの水戸の殿様がである。「烈公」と呼ばれた荒々しい気性の、幕末のカリスマ藩主斉昭が、である。

□茨城県のHPより 
藩政改革に手腕を発揮したことで知られる第9代水戸藩主・徳川斉昭(1800~1860)は、藩の財政再建のために質素倹約を奨励した。斉昭は農民の労に感謝して、青銅の農民像を作らせ、毎食膳に、人形が抱え持つ笠のなかに一箸の飯を供えたという。その人形像が木彫りの民芸品として伝承されているのが、「農人形」である。
「農人形」は、斉昭の作らせた青銅の像を原型にしている。簑(みの)を着て、あぐらをかいた農民が、手にした鎌を肩にかけ、ひざの上にすげ笠をあおむけに乗せ、傍らにはわらの束を置いている。

農人形(茨城県のHPより)
この感謝の気持ちこそ、時代は変わっても大切にされるべきものであり、また我々米を作る農家にとっては何よりも励みになるものである。

☆ツバメの営巣 (9日目)
どうやら完成したようだ
小さな体での労作である
このツバメが巣の主だ
家の前の電線にとまってよく囀る
まるで巣作りの状況を報告しているようだ

1 件のコメント:

  1. 拝啓、ひたち里山ファーム&ガーデン様、貴方様のお米作りの記載読まさせていただきました、大変に感服いたしました、現代の日本人の食に対する考えがいかに貧しいか考えさせられます、これからもお米作り頑張ってください、奥の細道を読んでいて武隈の項で植え継ぎの言葉が解らなく、調べたら貴方様のページたどり着きました。敬具

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