2013年7月3日水曜日

『現地確認表示票』が田んぼに立つ

田んぼの稲は一時は水不足でどうなることかと思われたが、そのあと適度な降雨と十分な日照が確保され順調に生長している。
背丈は40〜50cmほどまでになっている。


田植えするまでの苦労、植えてからの苦労(水不足があったり、大雨に冠水したり、イノシシの被害もあったり、雑草が大量に生えたり、台風で収穫間近の稲が倒されたり)と・・それぞれの時期にそれぞれの心配をしながら、最後の最後の収穫まで気の抜けない5ヶ月間である。
農家はこうやって愛情をもって稲に接し、成長を日々見守っている。
自然と愛着も湧こうというものだ。

         

この時期の我が地域では、多くの田んぼの畔には篠の棒が立てられ『現地確認表示票』なる紙がぶら下がっている。

この票を語るにはちょっと解説が要る。

         

我が国では国策として減反政策が続けられている。
『個別所得補償制度』なるものがあり、市町村レベルの協議会で当該地域の作付け面積を管理し、減反に協力した農家に所得を補填するというものだ。
かつては減反目標を割当し補償したのだったが、現在では生産目標数量(生産できる数量)の割当を管理する方法に変わった。
そのための水田の管理台帳が地域市町村の協議会に整備されていて、水田には『現地確認表示票』なるものが毎年立てられる。
ちゃんと補償を受けるために届け出た通りの作付けをしました(していません)の現地確認の際のチェック票だ。
担当者が現地を訪れこの票と現況を確認する、と言う仕組みだ。
(この現地確認が今日7/3に行われた。市の担当者が3人程のチームで我が田んぼを見て回っていた)
このような場所まで3人もの方がわざわざ現地確認にお出でになった。
なんともまあご苦労なことだ。
つまり、この票は減反政策の象徴・御印のような札なのである。
これが田植え後に稲作農家各戸に配られ、自ら札を立てて回るのであるが、なんとなくやるせない思いだ。

目まぐるしく変わる農政に振り回されている我々なのである。
食料自給率40%以下・・でも減反・・補助金漬けの農業には非難も・・環境保全の効用もある農業だ・・産業界と農業関連団体はTPPで反目・・。
立場変われば利害が対立するのはあたりまえだろうが、この先どのようになるのか小生のような愚者にはサッパリ分からぬ。

         

聞きかじりの知識では、TPPの議論では農産物の関税が撤廃されると日本の農業は壊滅するというものだったり、世界に打ち勝つ競争力のある農業にせねばならぬというものだったりがあるようで、議論が喧しい。
世の中、社会全体のフレームが変わりつつある(その一番は少子高齢化で人口が減ることだろう)のだから、農業と言えども変わらねばならないとは思う。
だが、そんな議論の対象となる農業は、こんな山間地の狭い農地でこじんまりとやっている農業ではなく、もっと平らな場所で大規模にやっている農業だ。
無論、この地のこのタイプの農業(中山間地農業)とてTPPによる影響は避けられないはずはない。
まあ、一気に衰退に向かうのだろうけれども、もともとTPPがあろうがなかろうが衰退傾向にあったのであり、その時期が早まるだけとも言える。なにもしなくてもダメになった地域なのだ。
ただ、ダメだダメだと嘆いていても誰も助けてはくれない。
この与えられた環境で何か出来ることを考えてやってゆくしかないだろうがね。

ちょっと大変だが、頭を切り替え知恵を出さないとね。

間違いなくあと10年後のこの地は、周囲が耕作放棄地ばかりになってしまうだろう。
TPP問題が、耕作放棄のタイミングを伺っている廃農予備軍の大義名分となる予感がある。
そうなると『農地』イコール『負の資産』となってしまう。
持っているだけ損だと感じる『元農家』が増えるだろうな。
そんなことになれば、このような地域はますます世の中から見放されてしまう、きっと。

なんとしても『負の資産』から『富の資産』に変えねばなるまいが。
そのためには農地に付加価値を付けることだ。
小生の考えだが、この地での農業の目指すべき方向性のヒントが、あの『金スマ ひとり農業』にあるのではないかと思っている。
更に付け加えれば、農業の6次産業化・サービス産業化を進めることだろうか。

・・・などと考えながら、いろんなことにチャレンジしている。
未だ先は見えないし不安も大きいが、楽しくあるしやりがいも感じているのだから、幸せモンである。

         

今日も『現地確認表示票』の札は、田んぼを渡る風を受けヒラヒラして稲の生長を見守っている。(・・トンボが棹の先に止まったりしてね。いい眺めなんだ、これが。。)

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