2012年11月24日土曜日

玉川村駅SL狂想曲 序曲

SL(Steam Locomotive)、蒸気機関車にはどうやら魔性が潜んでいるようだ。
この沿線を走るのが14年ぶりということもあるのだろうが、いとも簡単に市井の人を魅了し、興奮状態に陥れてしまう。

試運転初日である今日一日の、玉川村駅周辺の騒動振りを記したい。
これは、SLを目的に集まった人々の人間模様を観察する良い機会でもあった。

         

はやくも午前8時(上りSL通過予定時刻の2時間前)には 、JR玉川村駅舎前とホームに警備員5~6人が立ち、警備が始まった。9時を過ぎた頃には駅周辺にちらほら人が集まりだした。
やがて県警パトカーも到着、警察官2人が警備や交通整理に。
市の担当者や石炭積み降ろしの業者など、関係者が徐々に増える。
いつもは静かな駅周辺がにわかに緊張を帯びてきた。
石炭の運搬を担当する人たちが打ち合わせを始めた
ホーム上では警備の人たちが最終確認をしている

         

玉川村駅と野上原駅の間のカーブは撮影ポイントとして有名であるので、どの程度人が集まっているか(わざわざ)偵察してきた。
細い農道には多くの車が止まっている。
(小さくて見えにくいが、正面の)山裾には大勢の人が三脚を建てて並んでいる。
さらにこの奥の谷間にもずらりと人が並んでいる。
***写真クリックで大きな画像になる***
いやはや、すごい人出だ。


上の写真を撮ったのは県道脇からだが、県道にも路肩駐車された車がずらりと並んでいる。
さすがにこれでは、辺りの住民から顰蹙を買っているに違いない。

         

上りSLは玉川村駅にも停車せず通過するだけである。
そのうえ貨物列車や砕石を積んだ工事列車を牽引するDE10型ディーゼル機関車(オレンジ色の車体の列車だ)に引っ張られ、後ろ向き姿で走る。煙りは当然後ろに流れる妙な姿である。あまり被写体としては良くない。このショットだけ見ると確かに違和感がある。

常陸大子には列車の方向を変える回転装置があるが水戸駅にはそれが無いため、上りだけ逆向きに走らせていると聞く。
午前中の上りSLは、バックして走る。
頭は左に向いているが、進行方向は右(水戸方向)である
ほんの一瞬で通り過ぎたが、沿道には結構な数の写真を撮る人が群がった。近隣の人も確かにいるが、圧倒的に地元外の人が多い。

         

クライマックスは午後1時到着予定の下りSLである。
正午を回ると、付近の畑や田んぼ、或は山の土手まで入り込んで撮影ポイントを探す不躾な来訪者が、ウロウロしだした。
到着予定時刻の30分前には、玉川村駅の陸橋上に50人程の見学者が集まり、場所取りが始まった。
このあともさらに人数が増えつづけた
やがて下りSLが到着する頃には、盛り上がりは最高潮を迎えた。
サービスなのか、汽笛を盛んに鳴らしながら入線してきた


熱烈歓迎の中、到着
停車するとすぐに給水と給炭作業が始まった
蒸気とともに石炭の燃える臭いが漂う
石炭積み込みはクレーンだ
何の作業だろうか、線路に降りる作業員もいる
見学者の数は減らない
停車時間はほぼ30分間。十分な見学時間だろう。
上空には報道関係だろうか、ヘリコプターが飛んでいる。

この時間内に、かなりの数の見学者が駅構内でSLを写真に収めたようだ。
みなの顔がにこやかで、目が一様に輝いている。
短時間のうちに皆を魅了し虜にしたようだ。不思議なパワーである。

         

一方、沿線で待ち構える人々も実に多い。
玉川村駅から北に200mほどの県道沿いには、路上駐車の列
少しの空き地にも駐車している
神奈川・湘南ナンバーの車もあった
1時半、いよいよ下りSLが発車である。
大きな汽笛を鳴らした後、徐々に蒸気音が近づいた。
この区間では、出発して間もないためか、スピードは出さずにゆっくりゆっくりと進んでいる。
線路ギリギリまで入り込んで撮影している
数分前に市の職員に下がるよう注意されたが、
またすぐこのように・・ 
わが里山を背景にしてSLが進む

ほんの10数秒のドラマであった
午前中に視察したあの照田のカーブでも、撮り鉄諸氏の歓声が上がったに違いない。
煙りといい、警笛といい、申し分ない見せるための演出があったSL運行であった。
SLが去り、静かさが戻った構内では、後始末が進められていた。
石炭の燃えカスの除去だ。
SLから排出して落とされた燃えカスを、レール間に敷いた専用鉄板で受け止めたようだ
この燃えカスは、別途用意されている専用ドラム缶に詰め込まれた
祭りのあと始末、という感じだ。これも大切な裏方の作業だろう。

以上、見学者にとっては概ね好印象であったSLの運行であったろうと思う。

         

だが、地元住民としてはやや感じ方は異ならざるをえない。
ひとつは、車の路上駐車の問題だ。
このイベントに際して、玉川村駅および周辺に駐車場は全く用意されていない。やや離れた場所に用意されている。
(11/30 訂正 12/1と12/2の土日については、富士フィルムオプティクス社の社員用駐車場が解放になり2〜300台は駐車可能。場所はこちらGooglemapではフジノン水戸となっているが、現在は富士フィルムオプティクスだ)
知らずに駅構内のロータリーまで入ってきて、警備員に注意される車が大層目立った。
ということで、駅周辺の道路に路上駐車、空き地に勝手駐車が増えはじめた。
周囲はパトカーも巡回している。
今日は試運転日で目立った渋滞も発生しなかったから問題はないのであろうが、これ以上の路上駐車が行われると道路が麻痺してしまう。なにしろ県道一本だけで抜け道は無いに等しい。
これからの試運転日、あるいは本番運行の3日間、自動車で来ることを予定している方はかなり遠くの空き地に駐車するか、近所の人に頼んで止めさせてもらうか(結構空き地はある)のいずれかだろう。
よくよくココロして来訪されたい。

         

さらにもうひとつ。私有地や民家敷地内への無断立ち入りの問題だ。
良い撮影ポイントを探すためだろうが、勝手に民家の敷地内、あるいは田んぼや畑に入り込む輩がとても多いのに困った。

こちらとて鬼ではない。
せっかく遠くからわざわざ玉川村駅まで来たのだろうから、ちょっとの挨拶なり一言の断りを頂けたら、多少の立ち入りぐらい快諾するものを、と思う。
できれば(玉川村駅の)良い思い出を持ち帰ってもらいたいと思う。
だが、大方は当方の姿を見つけても、すれ違って目を合わせても、会釈ひとつするでもなし。
必要以上の会話等しなくても良いのだが、無言で立ち入られ、無視されると、無性に腹が立つ。
良い写真を撮るという目前の自己目的の追求だけに心が占有されると、『このぐらいいいじゃないか。ちょっとだけなんだから無断でも・挨拶なんかしなくても良いだろう』となるようだ。
このような人たちも、普段の社会生活時には、一社会人としての常識もマナーも持ち合わせているのだと思うのだが。
これもSLの魔性のなせる悪戯なのか、と思ってしまう。
非日常のスイッチが入るこの雰囲気が人を狂わすということだろうか。
あるいはまた、しょせんそれぐらいの薄っぺらい常識やマナーしか持ち合わせない、残念な人たちなのかもしれないとも考えてしまう。
ちょっと悲しい。
多くが、社会人としてそれなりに経験を積まれてこられたやにお見受けする御仁やその奥様とおぼしき方々なのである。

         

玉川村駅午後2時27分発の上り列車(通常運行列車)には、撮影を終えた撮り鉄諸氏が沢山乗り込んだ。きっと満足した顔だったに違いない。

         

今日は試運転日であり、本番前の序曲でしかない。
このままでは、本番日がかなり憂鬱である。

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