2012年11月9日金曜日

二十六夜尊

『にじゅうろくやそん』と読む。
不思議と茨城に多いのであるが、『○○夜尊』称される寺の縁日のひとつである(○○には日付の数字が入る)。
二十六夜尊は、旧暦9月26日に行われるのでこう呼ばれている。
略して『ろくやさん』と呼ばれることもある。
(⇨ さんは親しみを込めて呼んでいるのではなく、そんが転訛したものだろうと思う)
那珂市瓜連にある常福寺の二十六夜尊はつとに有名であり、今年は今日(11/9)が旧暦9月26日にあたり今日明日(11/9〜11/10)が縁日のため参拝に出かけてみた。

この寺の歴史的な意義は常福寺HPに詳しいので割愛するが、今でこそ伽藍とてそれほど大きくもない鄙にある寺なのではあるが、浄土宗においては関東十八檀林のひとつとして寺格は高い寺である。
中世城フリークの身としては、寺院そのものよりも、その場所が瓜連城跡というほうが興味をそそられるのであるが、始まると長くなるので今回は止めておく。

         

ここの縁日はまさにちょっとしたお祭である。
常福寺は、県道から本堂前の山門までおよそ200メートルの参道があるが、この祭りの期間中は参道両側に百を越す簡易屋台店舗、つまりはテキ屋が店を連ねる。
第一の山門
ここから200mの参道が始まる
この時間帯はまだ人出は少ないが
夕方からどっと参拝人が増える 
木立の奥が本堂
ギリギリまで屋台が続いている
これだけの数のテキ屋が並ぶのは、ちょっとした有名寺社の正月の初詣のようで、なかなか迫力がある。
この業界とて厳しいはず。そのテキ屋も彼らなりの商売勘でもって人出を見込み、結果十分商売になると踏んだということだ。
それぐらいテキ屋にとってはぜひとも出店したい縁日なのだろう。

テキ屋をつぶさに観察すると大層面白い。
大判焼き(回天焼き)・たこ焼き・焼きそば・イカ焼きなどの飲食関係が8割方であるが、定番の射的の店も数店あり、棚に並ぶ景品に店独自の特色があって興味深い。
その他、目に付いた店を幾つか紹介したい。
群馬県安中から来ている刃物屋
植木市
実を付ける樹木の苗を買い求めると良いとされているので
柿、柚子などの苗木が目立つ
流れるような口上で七味唐辛子を調合して販売している唐辛子屋
ゴムひも屋。まさにパンツのゴムをメインに並べている。
はたしてどれだけのニーズがあるのだろうか・・
帽子屋
確かに同種の店は他に無く、競合はしてはいないのだが
どれだけの売上げが期待できるのだろうかと心配になる
こういったテキ屋商売も時代の変化を少しずつ取り込んではいるが、どこか昔懐かしい品揃えであり、どちらかと言えばやはり年寄り・子供相手の対面商売だ。
これからもこの(・・・どこからともなく沸いて出てくるテキ屋の存在という)文化は続いてゆくのだろう。
求むる人あらば・・だ。

冷静な頭でよくよく考えると、これだけの雑踏の中で作っている焼きそばやたこ焼き・イカ焼きは、かなりのホコリが付いているはずであり、普段は絶対に食べる気がしない類いの物だ。
だが、この縁日という非日常のスイッチが入った状態ではその感覚を麻痺させる。
不思議な雰囲気を持つ縁日だ。
そして、とくに子供にとっては、ここで買い求めて食べながら歩き、お参りしたという体験は貴重な記憶となって終生残るに違いない。

これからも残したい文化である。

         

水戸市内には似たようなものに『二十三夜尊』の桂岸寺があり、毎月旧暦の23日が縁日となっている。
こちらも『さんやさん』と略して呼ばれるている。

ただ厳密には、こちらの寺の場合は月待ちの行事であって、瓜連・常福寺の場合の二世住職了誉の示寂(=高僧が死ぬことをこう呼ぶ)日の法要祭礼行事であるのとは性格が異なる(・・とワタシは考える)。

けれどもどちらも縁日。
現世で悩み多い人間の浮き世の憂さを晴らすものと考えれば、そんなことはどうだっていい。
宗派は異なろうが、尊い御仏の御慈悲はそんなちっぽけな了見ではない。

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