2013年4月14日日曜日

中山間地域農業とJA

4月も中旬に差しかかったが、12日と13日の朝は冷え込んで霜が降りた。
土筆のまわりに霜柱
土から顔を出したばかりのジャガイモの新芽も霜にあたり、先がヨレヨレになってしまった。
当地ではまだまだ安心できない日が続く。

         

我が家では、田植えする稲の苗はビニールハウスで自ら育てている。
外では霜が降りてもこの中はムッとするほど暖かく、苗が育つ理想的な環境にしてある。当然湿度も高い。

先月に播種した種籾から出た芽も、やっと生え揃って苗らしくなってきた。
コシヒカリの苗トレイ
5~6cmほどに成長した
天気が良いとビニールハウスの中は50℃を越え、熱地獄になる。
苗にとっても良くないため、ハウス側面のビニールを開け温度を調節する。
乾燥度合を見ながら散水を行う。苗には保温シートを被せる。
この苗を、植え付けを行う5月の連休に最適な長さになるように、室内を涼しくしたり暖かくしたりと様子を見ながら育てる。
一連の作業はなかなか手間がかかると同時に、気が抜けない。

なので最近は多くの農家が、田んぼに植える稲の苗を農協から購入する。
苗を植えられるまで育てるこれらの1か月余りの手間は結構な負担なので、高齢化が進んでいる現状では仕方ない面はある。それに育てる失敗もない。

         

いまや農家の作業はお金で代替出来るものが多い。
田んぼを耕すのも、代掻きをするのも、田植えも、稲刈り・脱穀も・・・。
これらのすべてを農協JAは請け負う。
農家のニーズに合わせたJAのしたたかな商売だが、農家を助けているように見えるこれらサービスが、長期的に見れば中山間地域の農業を根底からダメにしているようにも思える。

田んぼは農家Aさんの所有と言うだけで、そこでほとんどの作業をするのは請負人JAということになる。
最終的に米の売り上げ代金から、AさんがJAにこれらの作業手数料を支払うと、ほとんど残りはないと思う。
では一体何のための、誰のための農業なのか。
この疑問は、少なからず農家の皆が抱いているのだが、最終的にはやや自嘲的に『田を荒らす(耕作放棄地にしてしまう)よりはマシだ』、という答えに行き着く。

このような形であっても、耕作が続けられている間はよい。
後継者がいない農家は、あっさりと耕作をやめる。
米は食べる分だけ買った方が、米を生産するコストより断然安いのだから農家も買った米を食するようになる。
周りが耕作放棄していれば自分の田んぼを作らなくてもあまり抵抗は無くなるだろう。周囲の目も声も『しゃーんめぇ(仕方あるまい)』となる。
やめる大義名分ができると、要は農家自身のやる気が失せてしまうのだ。
農家自身が、もうここでの農業には限界があり魅力も気力もないし、次の代には農業を続けさせたくはない、という思いでいる。

こうやってポツリポツリと耕作放棄地が増えてゆく。
あと何年、きれいに苗が植えられ水が張られた田んぼの風景を見られることだろうか。
このような弱小農家が多く点在するこのあたりの中山間地域では、農業の現場が抱える構造的問題は、たやすく解決できない。
TPP以前の深刻な問題である。

2 件のコメント:

  1. 女王蜂@後見人2013年4月18日 7:05

    JAに支払いをするとほとんど残らない そうです 私も農家の生まれ 後を継ぐ立場 農業では食べられず 故郷を離れサラリーマンへ 体が自然界の一部になっており 長い転換時間でした 農業者以上の昼夜を働きました あの時代は 今は都市漂流者でしょうか これもこの世代で終わりですね 

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  2. いつもありがとうございます。
    同じように感じている同世代は多いのではないかと思います。
    でも答えが見つからず時間だけが過ぎてゆき、農家を取り巻く環境は悪化するばかり。
    いったいどうなってしまうのでしょうか、この日本。
    ただ嘆いていても何も変わらないので、愉しみながらやってゆく、精いっぱい抵抗してみる、これに尽きるようです。

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