2012年1月16日月曜日

難を転じる 〜 南天

殺風景な冬の時期は、ナンテン(南天)のその鮮やかな赤い実が目に付く。

我が家の庭の中程にも、相当な古い時代に植えられたと思われるナンテンがある。
我が古家は1770年頃(安永年間)に建てられたと推定され、おそらくは併せてそのあたりで植えられたのではないかと思われる。
根本部分などには多少の古さは感じるが、古色蒼然としているわけでもなく、枝振りも小さく幹もごく普通のものである。
少なくとも私の記憶にある50年弱の間での姿には、認められるような変化はまったくない。
悠然と構え、容姿は変わらず、増えることもなければ、また枯れることもない。

我が古家は、およそ90年前の大正時代の水郡線開通に際して、それまでは曲屋形式の農家の佇まいであったが曲屋部分を取り払うという大改築を余儀なくされた。
そのため、玄関の位置が変ってしまい今では庭の中央部になってはいるが、かつての玄関跡横の場所に植わっている。

         

古くから日本ではナンテンが「難転」〜難を転じて福となす〜に通じることから、縁起木として愛されてきた。
江戸時代に、火災よけ、魔除けとして庭や玄関脇に植えることがかなり広まったらしい。
遠いご先祖様もこの縁起にあやかって玄関脇にナンテンを、それも紅・白を揃えて植えたのに違いない。
白ナンテンは珍しい

         

薬効もあるというナンテンだ。
鎮咳効果があるとされる「南天のど飴」は健在だ。
CMのメロディーは多くの人が一度は耳にしたことがあるだろうし、(メロディーも飴も)口にしたこともあるのではないか。

         


そういえば、かつては赤飯を詰めた折り詰めにはナンテンの緑の葉を乗せていたと思う。
これはナンテンの葉に含まれる成分による殺菌効果を期待してのことのようだ。
最近では赤飯自体を折り詰めにして配るようなこと自体がなくなってしまったが、昔はよく見られたものだ。
その後、ナンテンの葉の実物を入れなくなると、赤飯の箱の包み紙にナンテンの実と葉が印刷されていたりした。
栃木県佐野市の柳月堂さんの赤飯の包み紙
(画像のみ借用)
このような話に頷ける世代は、最低でも50歳以上であろうか。

         

今年もまたひっそりと我が家のナンテンの老木は紅白の実を付けている。
我が家の難を転じ続けてくれているこの木の赤い実は、ヒヨドリの格好のエサでもある。
自ら鳥に食されることで、糞として種を遠くに運んでもらい子孫を増やすというしたたかな南天戦略である。
これなどもまさに「難転」そのもの、福なる姿ではないか。

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