2014年12月19日金曜日

山を守る~ 老山師の職人技

先日、長年林業に携わっておられる職人さんの、プロとしての凄技を間近に見るとともに、お話をうかがう機会があった。

当たり前だが林業というか山師の仕事とは自然が相手である。
伐採作業する地形・木の種類・木の生え方もすべて異なる。作業日の天候・風向き・風力もさまざまだ。
これらの組み合わせは無限にあるはずだが、それらのパラメーターをインプットして、その作業の瞬間の最善と思われる判断を下すのである。
長年のプロとしての経験から導きだされる判断は実に的確である。すばらしきコンピューターである。
狙った方向と場所に確実に倒す。そのうえさらに、倒した後の作業がやり易いようにちゃんと計算されているときている。

当たり前だが、チェーンソーを操る技術は一種の芸術である。
無駄の無い一連の職人の動き・所作に見とれてしまった。
プロの道具たち
ご主人が木を切りつつワイヤーを引く指示を出す。奥様がワイヤーをタイミングを合わせて引く
ご夫婦での息の合った作業だ
急斜面の立木の上のほうまで梯子で上りワイヤーを掛ける。
軽く10m程度はあろうか。。見ている当方のほうが怖くなる。
どの方向にワイヤーを掛けて引くかは、職人の勘に基づく。
ワイヤー牽引具のレバーを何度も引いて強烈に締め上げる。
ここぞという場面では職人が自らワイヤーを締め上げる。
大木となると男二人がかりとなる

直径50cmはあろうかというヒノキの大木も
職人の手にかかるといとも簡単そうに倒れる
 
わずか2日間で急斜面の立木はきれいに切り倒された
職人技の切り口(切断面)は実にきれいだ

林業の衰退は、エネルギー事情がこの半世紀でがらりと変わったことと、廉価な外材が一般的になったことが大きい。かつては生活を支える燃料や建築資材を産出した重要な場であった山林だが、いまやお荷物とさえなっている。

まったく手入れされなくなった山林が増えている現状について、仕方ないとはいえ寂しいと彼は言う。
『たかだか半世紀で、太古の昔より山から与えられてきた恵みの素晴らしさ忘れようとしている。
人間、木の温もりを忘れてどうするのだ。薪も燃やせないような人間ばかりになってどうするのだ。』

林業の盛衰を見つめてきた職人の語る一言一言は重たい。

『山はそのままでは寂しいものだが、手を入れると温もりのある存在になる。』

山仕事を生業として半世紀以上になる職人の、山と対峙する姿勢は実に厳しい。
だが山や樹木を見つめる目と、語られる言葉はなんとも優しい。

(※お断り・・・齢七十を超えた老職人たる山師が語ったのは大意としてほぼこのような内容であったが、旧世代の話す強烈な茨城弁とアクセントだったため、そのままでは文字にしてもわかりずらいので敢えて標準語的に編集・意訳してみた。)

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