2012年8月8日水曜日

AYU ready?

常陸大宮市は、西を那珂川、東を久慈川という大きな河川に挟まれている。
その両河川の間の台地上に、旧大宮町の旧市街地が広がっている。

台地の東西の端の部分は急な崖になっているところが少なくなく、特に現在の大宮小学校がある付近の北側・東側は急峻な崖となっているうえ、鬱蒼とした木立が立て込んでいて人を容易に寄せ付けない。
ここがその昔に部垂城(へたれじょう)があった場所である。
地政学的にみても、天然の要塞となる絶好の場所である。
このような地形をして、辺垂(へたれ)=周辺が垂れ落ちている、という文字が当てられ(後に辺→部と変化)たのも頷ける。
残念ながらいまでは城跡としての遺構はほとんど残っておらず、小学校と幾つかの寺院・墓地に姿を変えているが、その天然の城壁ともいうべき崖は往時そのままだろうと思う。

         

常陸大宮市の元になったひとつの自治体に旧大宮町がある。
この大宮と言う名称は、やはりこの部垂城内の一画に鎮座する『甲明神(かぶとみょうじん)・甲神社(かぶとじんじゃ)』という神社に由来する。
(甲神社の尊称『甲大宮』にちなむ)
その昔、当地方の領主であった佐竹一族の信奉も篤く、室町時代に奉納された能面などの寺宝が多数あることから、県北地域においてはそれなりの影響力をもった社ではあったようだ。
近世初期まで近隣12ヵ町村の総鎮守であったと聞く。
甲神社
現在でも境内は杉の大木が林立して神秘的な雰囲気が漂う場所だ。
中には神木として崇められているかなりの大木の老木もある。

(⇨ 昔から続いた街の名前である由緒正しい『部垂(へたれ)』は、江戸時代になって今の『大宮』と呼び名が改められている。
どうにもヘタレは語感が悪かったらしい。
ただ、この『部垂』という名称は、秋田県大館市に移った佐竹氏の一族が町の名前として大切に引き継いでいて、現在も存続している。
一画にはちゃんと『部垂神社』もある。
常陸徳川氏の藩内に対する文化政策は徹底していたようだ。
寺社の整理統合は強烈であったし、どうやら地名等も含めて佐竹時代の文化を一掃したかったのではないか。
という意味からすると、本元の改称は仕方ないとしても、大館市の名称存続は、移り住んだ人々が常陸時代を懐かしんだ・常陸時代を忘れないというよりも、むしろ反骨精神だったのかもしれない。
かつて大館市を訪れ、部垂町を散策し小さな部垂神社の祠の前に立った時、そんなことをふと思った。)

         

城跡の周囲が旧の大宮町市街地の中心地である。
昭和40年代頃までは商店街も賑わいがあったが、ご多分に漏れず衰退が激しい。

地方の、これといって特色の無い小都市たどっている典型だろう。
この街も、旧道を避けて中心からはずれた場所にバイパス道が開通した。
すると大小の商業施設が沿道に多数開店。
警察署・役所・金融機関など主要施設も一斉に移動していった。
沿道は全国どこでも見られるのと同じ風景に変化し、チェーン店の看板が立ち並ぶ。
それに合わせて、人と車の流れが激変した。
そもそも少子高齢化が進み、人口が減っている最中、狭い街のなかでの旧市街地からバイパス付近への人口移動・建物移動である。
結果、歯抜けとなり駐車場が目立つようになった。
元は小売店であったであろうシャッターを閉めて久しいと思われる店舗も多い。
時代の流れとはいえ、寂しい風景だ。

         

そんななか、その旧市街地で頑張っているある店舗がある。
実在の店は呉服屋なのであるが、某ネットショップでは風呂敷専門店として名を広めている。
残念ながら昨今のご時勢として、呉服業界は将来大きく発展する可能性は極めて乏しく、最低限の一定数のニーズは残るとしても、むしろ衰退業種と言ってよいのでは無いかと思う。

そんななかで早々とネットビジネスに活路を見出したのは先見の明があったと思う。
それにもまして、取り扱う商品は実用に供する機会が激減しているあの『風呂敷』なのであるが、工夫次第でなかなかニーズを掘り起こせているようだ。

この店の店主は、失礼ながらご高齢の女性である。
このビジネスモデルに思い切って舵を切った当事者は、店主の息子さん(呉服店の運営会社の社長)であるのかも知れないが、まったくもって、そのご英断というか勇断には頭が下がる。

お店や商品の詳しい話はこの店のHPをご覧頂くとして、今回この店が取り扱う商品のひとつである『ステッカー』が、少しずつ話題になっているのでぜひ紹介したい。
ふろしきや HP

朝日新聞(週刊茨城朝日 8/8版)にも取り上げられた。

那珂川・久慈川ともに日本国内で屈指の、鮎が遡上する清流である。
その鮎をモチーフにして、語呂合わせもしつつ、街の活性化の一助にしたいという熱い思いがこのステッカーを作ったようだ。
常陸大宮市 ステッカー

町起こし・ふるさと再生・地域活性化に向けて、全国至る所で頑張っておられる方・団体がある。
それこそ取り組み方は千差万別だろうが、このようなやり方もあるのだなあと感心した。
それもこんな近くの場所で。

へんな先入観に囚われていると独創的なアイデアは出てこない。
最初からダメだと決めつけたら前には進めない。
この街が元気になることは、なんでもとにかくやってみようと思う。

このステッカーを見て、『お前の方は準備できたのか?』と問われているような気がした。

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