2018年6月10日日曜日

茨城弁古語「いしこい」

久しぶりに茨城弁固有の言葉を紹介したい。今回は『いしこい』(形容詞)。あるいはやや崩れて『いしけぇー』。
標準語でピッタリすることばがみつからないが、ニュアンスは「(状態の)良くない、粗悪な」さまを表す言葉である。不細工であったり醜い、かっこ悪い、貧相、あるいは機能的に悪い、などのさまを表す。
比べられる同種類の良いもの(niceやgoodやbeautifulやprettyなもの)が一方に存在して、それと比較したうえで「いしこい」と使う(ように思う)。劣りはするがまだ価値は残っている状態である。No good=「価値無し」ではなく、Not Good=「品質が低い」という微妙な感覚の違いがある。
いずれにしてもあまり良い意味で使われる言葉ではない。
根拠などないのだが、古い時代(奈良時代の常陸風土記が編纂された頃だろうか)のこのあたり東国で使われていた「卑(いや)し」という語が長い間に転じて、訛って固定化した言葉のように考えている。さてどうだろうか。
◆ ◆ ◆ ◆
先日、ある同年代の知人と話をしていた際に、彼がごく自然に「いしこい」を口にしたので、まだ生きてた言葉なんだなあ、とちょっと驚き嬉しくなった。小生も当然ながら昔は使っていたし、今でも使おうと思えば正しく使える。だが、周囲で聞かれなくなったし、小生自身もここしばらくは他の言葉を使うことが多くなってきていただけに新鮮だった。
ただ、「いしこい」を違和感なく使用する・できるのは五十代以上の茨城北部の男性に限られよう。けっして女性言葉ではない。我々世代でもこの語の使用頻度は確実に減っているので、いずれ近いうちに死語となる運命だ。

他地方の皆さまにとっては、間違いなく茨城弁の言語変化など理解できないことだろうし、まったく興味ないことだろう。ここ20~30年ほどでアクセントも含めて茨城言葉も変化は激しく、ネイティブスピーカーの小生にとってはとても寂しい事態だ。
だがこれも仕方あんめ(=仕方あるまい)。

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