内館牧子さんの「終わった人」という本が来年(2018年6月)映画化され公開となる。仕事ひと筋だったエリートサラリーマンが定年退職後に途方に暮れるという、定年オヤジの苦悩譚である。読まれた方もきっと多かろう。
専業サラリーマンならほぼ全員、完全リタイア・無職となる日はやってくる。その後の日々の過ごし方は残された人生の充実度を大きく左右する。
一般には重たいテーマだが、自営農業に定年はないので幸いだ。
退職後は毎日が日曜日。当初こそ開放感に溢れてやりたかったことを心行くまで堪能でき、それはそれは楽しい日々かもしれない。だが、それらも数年内に一通りやってしまい、その後は何もすることが無くなる人が多いと聞く。多くは六十代で退職するので、まだ頭も体も働く。力を持て余してしまうのだろう。中にはこのタイミングで起業し新たな生活を歩む人もいるだろうが、むしろ例外だろう。
女性の場合、多くはコミュニティネットワークが出来上がっていたりするので比較的マシなのかもしれぬが、オヤジにおいてはこれが悲哀に満ちる。自分だけはそうはならない・大丈夫だというのは、大抵の場合において根拠の薄い自信に基づく。単なる思い上がりらしく多くは数年で脆くも崩れ去る。
嗚呼、今日も目が覚めて起きてしまった・・(嘆息)。
また長い1日が始まってしまうな・・(嘆息)。
今日こそ何して時間を潰そうか・・(嘆息)。
あ゛~あぁ、気が重い・・(嘆息)。 の日々になるだろうか。
しかも平均寿命は80半ばまで延びているので、死ぬまでには勤めていた期間と同じくらいの長さの日々が待ちうける。その長き日々を思うと欝になりはしまいか。何も手立てを講じずにいて無為に過ごすのはさぞ辛らかろう。準備する期間はたんとあっただろうに。
そんな観点からのお節介だが、趣味であるとともに大人の教養としての養蜂がどんなに素晴らしいものであるかをお伝えしたい。これから退職を迎える人には「終わった人」にならずに済むように、そして既に終わってしまった感のある人にはその改善策・解消策として参考になれば幸いである。
■お勧めポイント
・初期投資は少額。手軽に開始できる。
・定職を持っていてもできる。
・入れ込み具合もライトからヘビーまでお好きなレベルで楽しめる。
・間口と奥行きが異様に広いので、多種多様にいろんな局面で楽しめる。
・一人で気ままにも、仲間と一緒に和気あいあいとでも出来る。
・やり方次第だが、ランニングコストはあまりかからない。
・オールシーズン継続的して、しかも長期間(何年も)にわたって楽しめる。
・衰え行く体力と経済的余裕にあわせて楽しめる。
・外出して歩き回ることが確実に増え、体を動かすので健康的である。
・大人が嗜む健全な趣味であり、咎める人もなく、精神衛生上も極めて良い。
・珍しい趣味であり、どうしても他人に自慢したくなる。
・巣箱を置く場所が身近に無くてもできる。
⇒基本は巣箱を田舎の野外に置く。ただ、縁も所縁もない田舎に巣箱を
置かせてもらうことはほぼ不可能。なのでコネクション、ツテを頼って
現地の人と交渉する。
■その効用
・情報を集めて広く研究するようになる。脳を酷使するのでボケ防止になる。
⇒同好の士の有益情報がネットに溢れておりPC情報検索が習慣となる。
情報交換の場は毎日活況である。たとえばここ
・ハチ仲間が増え友達の輪が広がる。
付合いが会社関係者偏重だった頃とは違い、バラエティに富むようになる。
・成果物として得られるハチミツは、皆がたいていは喜んでくれる。
⇒誰かが喜んでくれることを為すというのは気持ちがいいし大きな励みになる。
・ハチミツが販売できたりすると僅かでも現金収入になる。
・捕獲・飼育のやり方は自由度が極めて高く、創意工夫を存分に楽しめる。
⇒これがオヤジの好奇心・探求心をいたく刺激する。
特に木工工作、工作機械操作、ホームセンター巡り、野山の歩き回りなど。
年甲斐もなく熱が入る。久しく味わっていなかった、時間を忘れるような
ハイテンション状態にしばし身を置くことができる。
・飼育は試行錯誤の連続で満足する水準におそらく辿り着けない。
故に常時未達成感があるが、それが更なる向上心を掻き立てる。
知的な刺激で精神は活性化され続ける。
・自然界の素晴らしさ・奥深さに気付かされて人生観が変化する。
何かに導かれるようにのめり込む人は多い。
・(奥さまにとっては)夫が何もせず毎日家にいる、三食用意しないといけないと
いう状況より、外出機会が多い趣味を持ってくれた方が嬉しい。
よって奥さま孝行にもなる。夫婦の会話レス解消も期待できる。
⇒採れたハチミツは奥さまに対する最高の懐柔ツールとなりうる。
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世の中にはオヤジがワクワクして熱中できるものというのはたくさんあるだろう。
養蜂は間違いなくその一つである。騙されたと思って先ずは始めてみることを強くお勧めする(始めるといっても直ぐにミツバチを飼えるわけではないことに注意)。
所詮お遊びでのハチ飼いであり、いくら入れ込んだとしても身上を潰すことはまず無い。
たかがミツバチである。だが、されどミツバチなのである。
佳きことを始めるに遅きに失することは無い。
未知の世界に飛び込む心理的ハードルは高いかも知れぬが、
勇気ある第一歩が、残りの人生を実り豊かにするのである。
悩んでいても時はどんどん過ぎていってしまう。
やらずして後悔するより、やって後悔したほうがましだとは思いませぬか?
年も改まる。新しきことを始むるのに良いタイミングではないか。
3月末頃からミツバチ愛好家はメインシーズン入りする。このタイミングで、まずは経験者から話を聞いてみる、現場を見てみることから始めてみてはどうだろう。これには失敗もなにもない。いつでもお手伝いする(肩でも背中でも押して差し上げる)用意はありますぞ。
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