2013年2月13日水曜日

ガンマフィールド 放射線照射業務再開の報

常陸大宮市に『ガンマフィールド』という施設がある。
近隣在住者であればたいていの人は存在だけは知っていると思う。
旧大宮町の大宮音頭にも『♪ ガンマフィールド 東洋一 ~ ♪』と歌詞がある。

農林水産省が所管する独立行政法人農業生物資源研究所の研究施設だ。
正式には『独立行政法人農業生物資源研究所 放射線育種場』と言う。
山の中に半径100mの巨大なすり鉢型の圃場があり、円の中心部にガンマ線を放射する設備がある。
東京ドームは約216メートル四方だそうだから、ほぼおなじ大きさだ。
(★放射線育種場の様子はこちら → 写真集) 
GoogleMapでもこの巨大な圃場ははっきりと確認できる。
   ★放射線育種場のある場所はここ →  ガンマフィールド

ガンマ線を作物に照射することで突然変異を促し、より良い性質の農作物を作り出す作業を続けている、という。
1960年(昭和35年)に建設され、翌年から放射線を照射開始しているというから、歴史は古い。
このような施設は日本国内では他になく、常陸大宮市だけにしかないのだが、地元住民としては『上村田の山の中にあるやつだ。詳しくは知らぬがなにやら放射線を作物に当てているところらしい』という程度の知識しかもっていない(少なくとも小生の認識では)。
この施設は一般に公開する日があり(前回は2010/10/16)見学できるのだが、残念ながら今まで一度も見学には行ったことはない。

         

ガンマフィールドが建設されたのと同じ1960年には、東海村に日本で初めての原子力発電所が建設されている。
(臨界に達して商業原子炉となったのは1965年だ)
この時代は、世紀を開く新しい科学の火として原子力がクローズアップされ、その新技術に誰しもが明るい未来と夢を抱いていたに違いない。
だが、一昨年の福島第一原発事で原子力の信頼は地に落ち、人々の認識が激変したことは周知のとおりだ。
おそらく現在であればこのガンマフィールドのような放射線を照射する施設の建設は、理性的な安全性の議論とは関係なく地元や反対団体の反対運動が起こり到底不可能なことであろう。

ガンマフィールドでは、東日本大震災の発生によりそれ以降の放射線照射を停止していたようだ。このことを研究所のHPで知った。
また同時に、(震災で照射を停止して以来)この間、設備の点検確認を行ってきて問題ないことが確認され、監督官庁の承認もおりたので照射業務を再開した、との公式アナウンスがなされている。
   放射線育種場からのお知らせ(平成25.1.25)
なんともヒッソリとしたお知らせだ。

         

福島第一原発事故以来、『放射線』やら『放射性物質』という言葉とともにその影響について一般の人の関心はいやでも高まった。
だが、そのはるか以前の50年も前からこのガンマフィールドでは、立ち入り禁止の特別な場所ではあるが強烈な放射線(ガンマ線)を、広く自然界に向けて照射してきたのである。研究施設内のような閉じた空間ではなく、である。

福島原発事故が起こり『放射能アレルギー』が広く蔓延したにもかかわらず、ガンマフィールドが扱う『放射線』については騒ぎになった・問題視されたということはないように記憶している。
ごく身近に『放射線』を扱うこんな施設があることに、ひどく鈍感になっているとも思える。またある意味ではそれぐらいの認識しかされていない存在とも言える。

十分な知識も持ち合わせぬ身であるので無責任な発言は控えるが、果たしてこの施設周辺での放射線量の測定はどのようになっているのだろうか、という個人的、素朴な疑問はずっと抱いている。
付近では他地域と比較して何かしら特異な疾病の発症比率が高い等の事象は確認されていないのだろうか。付近住民の健康に対する長期の追跡調査があるのかどうかも知らないのであるが。
すぐ近くには人家がない山の中といっても村田小学校は東に2キロ弱である。
農業生物資源研究所HPでも放射線育種場のHPでも、周辺環境に対する放射線の影響やその安全性については一切言及されていない。

ひょっとしてこの施設では放射線の影響を心配しなくてよい構造なのかもしれない。
(・・・原発も同じような考え方だったのだろうが、ちゃんと幾つものモニタリングポストを設置していた)
福島原発事故では放射性物質を含んだ灰が飛散したために放射能汚染が広がったが、ここは放射線を照射しているだけで放射性物質は飛んでいない。放射線が外に漏れない限り安全なのだろうとは思える。
だが、少なくとも植物を突然変異させる=遺伝子を変形させるのであるから、当然に同じ生物としての人間にも多少の影響はあるだろうと思うのが自然だな、やはり。
あるいはどうやっても外に漏れない構造(そのためのすり鉢型か)になっていて上空には漏れても周辺には漏れないとしているのかも知れない。
どんなに万全を期していたとしても、どこで何が起こっているのか分からない。何しろ目に見えないものだから始末が悪い。
仮に周辺に放射線が漏れ飛散していたとして、その量が微弱であっても何十年もの間、近くで生活して晒されていれるとすれば、何かしらが・・・。
浅学による理解不足で、全くの思い違いならば良いのだが。
残念だが、原発事後ににわか仕込みした放射線や放射能の薄っぺらい知識では、これ以上どうににも思考が深まらない。

         

研究内容を見る限り有用な試験を行っている施設だし、われわれはその恩恵に浴しているのは間違いない。その意義は十分に理解するものである。
だからこそ、福島第一原発事故の後だけに、より丁寧な広報活動が必要なのではあるまいか。
研究所自らのリスク管理の一環として周辺の複数ポイントで放射線量を計測しているとは思う(・・・原発事故後でも、もしやっていないとしたら驚きだが)。
そういった資料を、放射能全般に懐疑的な人たちに求められて渋々公表するのではなく、自ら進んで先手を打つ形で発表すればよいことだ。
経済産業省のHPには、さまざまな公的機関・研究所・地方自治体がモニタリングしている数値をまとめてリンクしてポータルサイトとして公表している。
・  経産省HPの各機関のモニタリングデータ
農業生物資源研究所・放射線育種場も、ここに(計測したデータが有るのであれば)出せばよいのにと思うのだが。

知りたい人にだけに求めに応じて出す=>求めが無いと出さない=>隠しているのではなく求めないほうが悪い、という企業態度にどうしても映る。
これではCSR(corporate social responsibility=企業の社会的責任)の観点からもいただけない。
このあたりの感覚が、民間企業の敏感さに比べやや鈍いし努力が足りないように思う。

今も続く東電の数々の失態は良い教訓ではないのか。
あのように企業は危機管理を誤り、対応が後手に回ると何をやっても不信の目でみられるようになる。
都合の悪いことを隠ぺいしているのではないかとあらぬ疑念を持たれて信じてもらえない。
最悪、事業そのものがが立ち行かなくなる。将に組織の危機だ。

残念ながら地元民は、ガンマフィールドについても、東海村の原発についてもやや関心が低いのが現状だ。彼らもそれに甘えていてはダメだろう。

         

ネットで調べていたらちょっと気になる記事を見つけた。
ガンマフィールドで低量被爆の研究をした大学教授の話だ。
内容は『低線量被爆の害について 根岸レポート9』に詳しい。
どうやらこの調査から言えるのは発がんリスク増大ではなく、突然変異の確率が高くなるというものだが、やはり気にはなる。
本来自然界では発生しない不自然なものを強制的に作っているという漠とした不安・恐怖だ。
それにガンマフィールドから外部への放射線漏れの有無を測定しているのかどうかさえも、知らされていないのだから余計にだ。
クドいようだが前述のように(どこかに公表されているのかも知れないが)一般の人が容易に知りうるような公表形式になっていない。

         

小生の手元には、福島第一原発事の直後に購入したガイガーカウンター『ポケットガンマ(Gamma)くん』がある。
この放射線測定器を入手してしばらくの間は、市内のいろいろな場所の線量を計測して回った。
手元の記録を見たらガンマフィールドの正門前でも放射線量を計測している。
この時、特別高い数値が示されなかったので安心した記憶がある。
今回知ったことだがこの時点(2011/08/19)ではガンマ線照射は停止していたようなので、当然と言えば当然である。
照射再開の報を聞いた今、再び放射線量を自主計測してみようかと思う。
測定・撮影は2011/08/19
他地域と同じ程度の0.14μSV/hだった。
余談だがこの撮影の瞬間、大きな余震があった。
(8/19 14:36発生  震源地は福島沖。福島・宮城では震度5弱を観測。当地も震度3だった)

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