2012年5月21日月曜日

金のリング狂想曲

太平洋側を中心とした日本の広い範囲で21日朝、太陽の中心部が月に隠され、細いリングのようになる金環日食となった。
久しぶりにしみじみと天を仰ぎ見た人も多かろう。

日本の金環日食は1987年の沖縄以来25年ぶりで、今回のように広範囲で見られるのは932年ぶりだそうだ。
茨城県も含めて広くこの史上まれな天文ショーを観測できた。

                                         

いまでこそ、その仕組みが解明されて、さらには発生する正確な日時・観測可能範囲まで計算されいるため、何の疑問も持たずに心待ちにし、天を見上げで驚嘆の声をあげられる。

それに比べ、なにも知識がなかった古代の人たちにしてみれば、かかる不思議な自然現象は驚きと戸惑いであったことだろう。
何か不吉なことの前触れ・前兆と捉えたのも頷ける。
天照大神が天岩戸に隠れたという古事記・日本書紀に見える記録も、はるか古代のこのような不思議な記憶があったればこそ成立したものなのだろう。
大自然を前にして畏敬の念を抱くということ、現代などに比べはるかに厳しい自然とともに生きざるを得なかった時代の、実に自然で素直な気持ちであったはずだ。

ごく稀にしか見られない珍しい天体ショーとはいえ、ここ数日の21世紀の巷間は、やや騒ぎすぎのきらいがあるのでは。まさに金環食狂想曲。。
(これ自体がニュースになることは良いのだが。でもしかし言い換えれば、それだけ平和な世の中ということもできる。ただ足下を見れば問題山積の今の日本だが。)

テレビニュースもワイドショーも、新聞も、実に丁寧に観測のための情報を提供してくれている。至れり尽くせりの感がある。Too much!!
さらには、太陽を直接見ると目を痛めるから直接見ないようにとの『ありがたい』ご注意までも。
これを商機として、だいぶ観測メガネも売れたようだ。

当たり前だが、太陽を直接見ると眩しいし、目も傷めると容易に想像がつく(はずだと思う)。
だが、こぞってテレビ・新聞でこのようなことまでわざわざご親切に丁寧に言ってくれている。
聞いていると、なにか馬鹿にされている(・・もしくは幼児扱いされている)ような気がしないでもない。
本当にここまで手とり足とり教えてもらわないとだめなのだろうか、一般の人は。
皆さんはいかがお感じであろうか。

と思ったが、夕方のニュースでは6都県で16人が目の異常を訴えて眼科医の診療を受けた(日本眼科学会発表)とのニュースがあった。
このようなことは全くの個人の責任ではあるが、やはりどうしようもないのかな、今の日本では。
どうやらそれぞれが自分の責任で思考することを停止してしまったらしい

                                           

怪しいものを含めて、ありとあらゆる『情報』が氾濫している現代だ。
われわれにとって大切なのは、これらの情報の真偽を疑うことから始まり、取捨選択すること、次にその内容を理解し、吟味すること。
そしてその判断結果から、何かしらの行動を起こす、ということまでを含めて、いわゆる『情報リテラシー』の訓練がなされていないと、古事記・日本書紀の太古の昔の人ととなんら変わらない。
むしろ情報が害になってしまう恐れも。

農業に関する情報もまったく同様だ。
農業者のバイブルである月刊誌『現代農業』は、栽培方法やら改良機具やらの紹介で情報満載だ。
だが他地域での栽培成功事例などはここでは当てはまらないことももしばしば。
やっぱり当地の現場が一番大切なことはいうまでもない。
が、アンテナは広く張り巡らしよりよい方法を広く外に模索することも大事だ。
でないともっと良くしようとする現状改善は進まない。
要は情報と正しく向き合うことだろう。
でないと単に振り回されるだけで徒労に終わる。

                                             

今回は金環日食であり、太陽の光が月の周りから見えたため、薄暗くなっただけであった(皆既日食は太陽を月が覆うため夜の状態になる)。
もっと暗くなものるとひそかに期待していたのだが。
ではあるが、今日は素直に天を見上げ、自然に畏敬の念を抱いた。

次に日本で真っ暗になる皆既日食が(特に茨城地方で)見られるのは、2035年9月2日(出典:Wikipedia 日食)、とのことだ。
観測可能地域は能登半島から茨城県にかけてらしい。
あと22年後。。
果たしてどのような世の中になっているのであろうか。
この地域の様子はいかなるものか。
我々世代とて、そもそも生きていて天を見上げられているのだろうかとも思う。
今日のこの日(・・そして東京スカイツリー開業前日だったなど)を思い出しながら眺められることができたらなぁと。

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