2019年7月22日月曜日

今年のミツバチ巣箱のスズメバチ対策~田中義麿博士による対策法の実践

1948(昭和23)年から1970(昭和45)年にかけて発行されていた古い雑誌で「月刊ミツバチ」(養蜂技術協会)という養蜂家向けの月刊誌がある。国立国会図書館のデジタルコレクションに登録されているので、手続きをすれば近くの図書館でだれでもが閲覧できる(→詳細後述)。
年明けから少しずつこの雑誌の閲覧可能な全巻(1950-1970)を閲覧した。ミツバチのスズメバチ被害はとても悩ましい問題で、その対策について先人の試行錯誤や数々の知恵にはきっと学ぶべきものがあるはず、と考えたからだ。

予想通りスズメバチ関連の記事は多く、昔から同じように皆が苦労し、それぞれに知恵を絞っていたことがよく分かる。実に様々な試しみの投稿があり、なかなか読み応えがあり面白い。読了後にスズメバチ対策技術はこの半世紀の間ほとんど進歩していないということも分かった。それだけ難しいことなのだろう。近年、スズメバチの攻撃能力を一時的に低下させるスプレーが開発されているが、恒常的に巣箱から遠ざけるには適していないだろう。
スズメバチは養蜂家にとっては甚だ迷惑な存在でしかないが、だからといって完全に自然界から駆除して絶滅させてしまったら、これはこれで生態系が不自然に崩れて厄介な事態になるはずだ。一部の利益集団の都合・思惑で左右されて良いことではない。やはりミツバチの巣箱にだけ近寄らせないというのが理想的解決策であって、とにかく知恵を絞る・工夫するしかないということだ。
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そして1962(昭和37)年2月号に面白い記事を見つけた。「スズメバチ対策とヘチマ棚」というものである。
筆者は理学及び農学博士で、国立遺伝学研究所の要職も務めた田中義麿という先生である。「近代遺伝学の基礎を築き上げたほか、世界初の試みである半野生動物の品種改良など動物育種学の先駆者となった」(wikipedia)という、この方面のオーソリティでとてもエライ方であられる。

田中博士は昭和17年から趣味で養蜂を始めたようで、この時点で既に20年の養蜂歴でありベテランの愛蜂家である。我々と同じように「スズメバチにはさんざん悩まされた」とのある。ここで研究者魂に火がついたのだろう、動物育種学のオーソリティ田中博士にとってスズメバチ被害も研究対象へと昇華したわけだ。そしてこの専門誌へ寄稿である。
※著作権の問題があるためボカシを入れてある
寄稿内容は割愛するが、エッセイ風に自身の経験を記しながらも、(これは素人考えだが)スズメバチが負の走化性を示す物質の存在可能性を見出し、確信していたのではないかと思える内容となっている。つまりヘチマはスズメバチが嫌がるなにかしらの物質を出しているのではないかという気付きである。
この対策の結果、田中博士は「最近5年間というものは全くスズメバチ被害から解放された」といい、この自らの体験の結果には大変に満足しておられる。最後には「筆者の喜びを分かち合いたい一心からこの文をものにした次第である」と結んでいる。

この投稿は大きな示唆を与えてくれた。この対策を真似てやってみないわけにはいかんだろう。ということで、今年の本格的なスズメバチシーズンを前に準備を整えた。ヘチマの栽培である。順調に苗が育ったので巣箱脇に移植し、棚を作った。
何しろ昨年は9月初~10月初のひと一月間で採蜜直前の元気な群れ6箱がスズメバチの猛攻に合いすべて逃去してしまった。過去最大の被害だった(→多数のスズメバチが群がり続けていて巣箱に近寄れず、結局採蜜は諦めざるをえなかった)。当然に精神的ダメージは大きく、ガッカリ続きであったから。どのようなものになるかは分からぬが楽しみにしている。


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ちなみに、この雑誌は東京永田町・国会議事堂横の国立国会図書館で全号閲覧が可能だ。デジタルコレクションとして登録されていて、同図書館内の専用PC端末を使って簡単に閲覧でき、有料だが印刷もできる(→自宅PCのインターネットで見ることはできない)。
東京までは行けないぞ、という人のために国立国会図書館とデジタル化資料送信サービスを提携している全国千以上の図書館でも専用PC端末で閲覧が可能になっている。地方に居ながらにして国立国会図書館に収納されている貴重な図書・雑誌(デジタルコレクションに登録されているものに限られる)がタダで見られる(印刷は有料)のである。有り難い時代になったものである。
この田中博士の寄稿内容について、興味・関心のある方は一度最寄りの提携図書館まで足を運び、ぜひ参照されたい。

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