2017年2月15日水曜日

茨城弁「かえってどうも~」と「いや~どうも」

茨城県が誇るラジオ放送「茨城放送」。毎週水曜日午後3時20分からマシコタツロウがパーソナリティーを務める『マシコの青なじみ』というコーナーがある。茨城県民の歌をBGMで流しつつ、リスナーからの投稿をわざわざ強烈な茨城弁で読んで紹介するコーナーなのだが、これが面白い。
USTRAMでLive映像を放映しているので県外の皆さんもradikoでなくても見る・聞くことができる。水曜日のこの時間に是非いちど聞いてみて欲しい。お勧めである。
 USTREAM:ibs-live
マシコタツロウ氏は常陸太田市出身でバリバリの茨城弁スピーカーなので、アクセントも正確、まったく不自然さを感じさせないのがいい。ちなみに青なじみとは、茨城の方言で「打撲したときにできる青あざ」のことだ。
このコーナーの始まりと終わりの挨拶は『かえってどうも~』というフレーズだ(マシコ氏はスタジオに見学に来ているギャラリー全員にこのフレーズ唱和を強要している)。

さてここで「かえってどうも~」の意味である。「どうも」は「どうもありがとう」のどうもである。「かえって」は「むしろ」と言う単語に意味合いは似ているのだがちょっと違う。この「かえって」だけは東京言葉でピッタリの単語に言い換えができないのである。あえて意訳すると「こちらのほうこそありがとうございますね」なのだが、これではこのフレーズの一番肝心な人と人とのココロの機微部分が表現できていないし、伝わらない。大体70%程度だろうか。ネイティブな茨城人でないと残りの30%のニュアンスは理解できない、かなり上級者編に入る方言であろう。
さらにはこの言葉を使用しておかしくない適齢年代層は四十代以上であったりするので、余計にややこしい。かくいう小生も二十代の頃はまったく使っていなかった言葉だが、この歳になってしばしば使うようになっている。
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(以下は、小生が考えている解釈であり人によっては多少違うかも知れない)
Aさん(70代)が所用があってBさん(70代)を訪ねてきて話をしたとする。
用事が済んで帰るときのAさんの挨拶は「んじゃ、どうも~」とか「んじゃ、どうもね~」が一般的だ。(※なんと茨城では「ん」で始まる言葉がある。「それでは」→「そんじゃあ」→「んじゃ」という、so音の欠落だろう)
Bさんはすかさず「いや~、かえってどうも~」とか「かえってどうもすまねね(=済まないね)」とかで返す。
つまりこうだ。
Aさんが来訪してくれたという行為があって、それがBさんとしては自分のために行ってくれた行為と考えられるため、「(その有り難い行為に対して)たいへん申し訳なく思います。むしろこちらのほうこそお礼を言わねばならない立場ですよ」という気持ちを表すのである。相手から先に「どうも・・・」と言われたら、それ以上の「どうも・・・」の気持ちであることを伝える、とでも言おうか。実際でもそのような使用例が目立つ。相手を立てつつ、円滑なコミュニケーションを維持するために使われている慣用句だ。どんなシチュエーションで使っても、何度リフレインしても、誰に対して使っても失礼に当たらない便利なフレーズである。ただあまり若い人(二十代以下)が使うと変なので要注意だ。
マシコ氏が番組でこれらを多用しているのも「わざわざスタジオまで来てくれて本当に有り難いことです。返す返すも申し訳なく思っていますよ~♪」的な意味合いだろう。
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「かえってどうも~」の類語として「いや~どうも」がある。こちらはさらに解説が困難な言葉だ。というのは、使用する場面によっては、軽い挨拶言葉だったり、感謝の意であったり、驚嘆の意だったり、軽い軽蔑・嘲笑の意だったり、あるいは固辞の意だったりするのでややこしいからだ。かなり広い意味で使われる言葉であり、ちゃんと説明できる人はいないのではないか。意味合い的には「いやはや、どうにもこうにも○○○だ」の略だろうと思う。
このように、茨城弁はけっして冗長にならずに簡潔に言葉を縮めて、曖昧ではあるが広く相手に対する感謝の意を表すことが根幹にあり文化としている。嗚呼、なんと奥深い言語であることか。粗野のようで、乱暴のようで、汚いことばのようで、怒っているようで、に聞こえるかも知れないが、実は溢れるくらいの相手への愛情がこもっているのだ。

ついでながら、「どうも」は文字にすると3文字となるが、実際の発音は「も」はほとんど発音しないのがネイティブスピーカーである。「i-yah~ doh-m」となり、最後は無音のmである。アクセントは最初のyah部分にあってあとは極端に下がる。聞きようによっては「やっ、どぉ・・」に聞こえるだろう。それでも全員が「いや~どうも」とちゃんと理解して会話を続けている不思議。
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今日(2/15)のマシコの青なじみコーナーにも聞き入ってしまった。
そういえば、先日の伯母の葬儀の直会の場は、年配者が大多数なのでこれらの言葉がいたるところで飛び交っていた。こんなことを考えてひとり(心の中で)笑っていたのは小生ぐらいだったろう。いや~どうも。。。

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