ミツバチの世界では今の時期に新しい女王バチが生まれる。ひとつの巣・群れに女王バチが二匹併存することはないので、母親女王バチ(二回目以降の分蜂であれば先に誕生した姉の女王バチ。要は時系列的にみて前からいる女王バチ)が群れのほぼ半数の働きバチを引き連れて巣を新女王バチに譲り出てゆく。毎年営まれる種の生存と繁栄のための本能行動だ。
分蜂があった巣箱の中を覗くと、下の写真のような巣の一番下の先っぽに女王バチが生まれた場所を確認できる。ポッコリとした丸い壺のような形をしている。女王バチになるべく育てられるハチのために、特別に作られたこの部屋が「王台(おうだい)」と呼ばれる場所だ。
(写真のように、何個も王台ができるということは何回も女王バチが誕生するということであり、何回も分蜂するということ。成り行きに任せ立て続けに分蜂させると、群れは半分→半分→半分となり、一気に弱小化してしまう。なので人為的に孵化する前にこれを除去して分蜂をコントロールする養蜂家もいる。特にセイヨウミツバチの飼育では一般的な方法のようだ)
ここで与えられる特別な食事=ローヤルゼリーで女王バチとしての特別な能力(=産卵能力・寿命)と身体(=働きバチより一回り大きい)を得ることになる。この驚異的なパワーを我々人間も期待してローヤルゼリーを重宝しているわけだ。
赤丸部分が王台 左側の王台はすでに巣立った後 中央上はまさに部屋から出ようとする頃だろう 右側はまだ少し後になるもの |
一方で、通常の働きバチが孵化する場所は一般的なあの六角形の巣だ。育つ環境からしてこんなに違う。同じメスなのだが扱いはまるで違う、厳しい現実なのがミツバチの世界だ。
働きバチは生まれて死ぬまでの1~2カ月の間ずっと蜜を集めて働き続ける。女王バチは生まれ2~3年生きるとしてもひたすら産卵するだけの役目。どちらが幸せなのだろうか。どちらも幸せなのか。むろんそれぞれのミッションはそんな単純なものではないだろうが、いずれにしても各々に与えられた使命を立派に果たし、愛おしいほどに、精一杯、懸命に、ひたむきに生きている彼女たち。われわれ人間にはうかがい知れない世界があるのだろう。
ここの豊かな自然の中で存分に生の喜びを謳歌していること、それだけで両者ともに十分に幸せなのではないかと素直に思う今日この頃だ。・・・ミツバチ飼育はある意味で哲学でもある。
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