古代ハスの観賞用池として作った田んぼの一角の場所。当初は驚くほどキレイな古代ハスが咲き揃い、道行く人々の目を楽しませてくれたのだが、ここ2年ほどまったく花が咲かない状態が続いている。芽さえも出てこない。
2019年7月まではこのようにこの池で茂って咲いた古代ハスだが 翌年から全く咲かなくなってしまった |
すぐ脇の田んぼの中に伸びた地下茎部分からは、従来通り葉も茂り立派な花も咲いている。環境的にほとんど違いのないこの両者でなぜ斯くも著しい違いがあるのか今もってわからずにいる。今年も同じように芽も葉も出ずに花も咲かないまま初夏を迎えるのはあまりに虚しい。
あれこれ知恵も無い頭で考えてみた。
同じ地下茎から広がった古代ハスであるので、わずか数メートルしか離れていない専用池部分と田んぼ部分で何かしら決定的な違い目があるはずだ。・・・・・ヒントになるとある現象を思い出した。
2年前の春先、この古代ハスの地下茎を知人に譲るために泥の中を掘り進んだことがあった。地下茎は泥の更に下の粘土質の土中(泥からは30センチほど深い部分)にあるのでそう簡単には掘れない。そもそも泥の中で姿が見えないため手当たり次第に泥と粘土質の土を掘り込んで、あとは手探りで地下茎を探して引っ張り出した。このとき約1㎡ほどの広さを、深さ30~40cmほど掘ってグチャグチャに土を攪乱した。
その年も次年(去年)の夏も池のハスは芽も出ず、花も咲くことはなかったのだが、この土をグチャグチャに攪乱した箇所だけは芽が出て葉が茂ったのである。いままでこの攪乱作業と発芽の因果関係を特段気にも留めなかった。だが不作が3年にもなろうとしている今、何かしら出来ることをしたいと思い、他所で同様な事象がないか調べてみた。すると(鉢植えのハスではなく)滋賀県草津市の琵琶湖に生えていたハスが消えたという事例をみつけた。
国内最大級のハスの群生地が突然の消滅 | ソーシャル・イノベーション・ニュース (social-innovation-news.jp)
⇒2016年、原因不明で、なんとハスが消滅。しかも、草津市が調査したところ、「今年(2016年)の地下茎が見当たらない」と話すように、花はおろか、茎すらなくなる緊急事態に。そこで、滋賀県と草津市、そして、滋賀県立大学の名誉教授で滋賀自然環境研究会の小林会長が調査。その結果、消滅した主な原因は、枯れたハスの葉だという。今までに枯れたハスの葉などが大量に湖の底にたまり、土に蓋をしてしまった。そのため、土に酸素が無くなり、ハスが呼吸できなくなって枯れてしまったという。
この記事を読んで、あの土攪乱箇所の発芽した事象が見事につながった。つまり、古代ハス専用の池を整備して数年は(上の写真のように)密集して咲き揃ったが、その後、枯れた葉や花托などをそのままの状態で放置しておいたため、この数年間で土に蓋をしてしまっていたのだろう。狭い池である上に側溝からの流水の流れ込みもまったく無い。枯れ葉が堆積したまままで泥は全く動いていない。かたや隣の田んぼは毎年田起こし・代掻きと土を何度も攪乱しているので、土中の酸素も供給されている。両者の違い目はこれだろう。とすれば地下茎に及ばすとも泥と土をできる限り掻き混ぜて、地中に酸素を送り込めればよい。生育場所の環境悪化が枯れた直接の原因なのだろうとは思うが、種は何千年も泥の中で生きているほど生命力は強いハスなのに意外と弱いんだなぁというのが率直な感想だ。
ということで、(ダメかもしれないが)ハス池の泥と土を鍬で掘り起こし、攪乱してみた。池は既に卵から孵化したオタマジャクシが大量に泳いでいる水たまりになっている。周囲の畔道の雑草防止を兼ねて、泥を畔に掘り上げて被せる作業となった。地下茎が生きていればきっとまた生えてくるに違いない、と信じて。道行く人から「今年は咲くと良いわね」とたくさんの声援を受けた。予想以上にこのハスが咲かないことを気に掛けてくれているので嬉しくなった。黙々と作業すること3時間。ひとまず池全体の泥攪乱作業と泥上げは終了した。腰痛の他に、鋤を握る手にはマメが何カ所も出来て潰れて大変な思いをしたが、これでまた古代ハスが咲き揃ってくれたなら安いものだ。初夏が楽しみだ。