2017年5月31日水曜日

マブシ

「マブシ」と聞いてそれが何か・どんなものかをイメージできる人がどれほどいるだろうか。漢字では蔟と書く。草カンムリに族。
今日(5/31)のニュースで、皇后さまの「初繭掻き」が報道された。皇后様は皇居内で蚕を育てており、藁でできた「まぶし」から繭を一つ一つ取りだし収穫されたとのこと。
養蚕において、まぶしは必須のツール。簡単に解説すれば、蚕が繭を作る場所。繭を作りやすいようにした仕掛け・道具である。藁で波形(ジャバラ状態)に編んだまぶしもあれば、ボール紙を井桁に組み合わせて作る、より改良された「回転まぶし」などがある。こちらはワンルームマンションタイプ。
身体が少しだけ黄色くなり透けるように変色してきた熟蚕をここに移してやると、せっせと繭を作り出すのである。
といってもまぶしの姿はイメージ困難であろうから、写真入りで説明しているHPを参照されたい ⇒  回転まぶし

我が家でも昭和四十年代までは養蚕をしていたので、これらの養蚕ツールは、あの養蚕室の独特の臭いとともにいまも鮮明に記憶に残っている。養蚕では子供が手伝える工程が多いため、よく手伝わされた手伝ったものだ。
毎年、この時期に皇后様の初繭掻きニュースに接するたびに、あの時代が蘇ってくる。すでに半世紀前のことになてしまっていて懐かしくもあるし、ちょっと寂しくもある。

かつて明治期から日本の輸出を支えた生糸だが、養蚕業の衰退は著しい。当地にもたくさんあった養蚕農家はいまでは皆無だし、葉タバコ農家も同様にすっかり姿を消した。
これらの農産物は茨城北西部の主要産業であったが、衰退していった時期と地域の過疎化が進行した時期はおどろくほど一致する。しかも過疎化はいまも進行形である。はてさて、あと5年後にこの辺りはどうなっていることやら。
来年もまた、このニュースに接したときに、おそらく同じ感慨を抱くに違いない。

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