太田道灌の山吹の里のエピソードがあまりに有名であるからだろうか、ヤマブキには実が付かないと思っている人が多いが、ヤマブキに実は付くのである。次の写真がその実である。花が散って緑色の小さな実となって花の跡についている。これが6月中旬のいまの姿だ。
では和歌に読まれている「七重八重 花は咲けども 山吹の 実のひとつだに なきぞ・・」は間違いかといえばそうではなく、正しい。
なにやら頓智のようだが、ポイントは「七重八重」だ。
実はヤマブキには一重の花の種類(上の写真のものは一重の山吹だ)と、八重のものがある。一重のヤマブキは実をつけるのだが八重のものは実をつけることがない。雌しべが退化してしまい(加えて雄しべが変化して花弁になってしまっているため)、実がなることがない(Wikiより)のだとか。
乙女が太田道灌にそっと差し出したのは、和歌の初句にあるとおり八重のヤマブキ。であるので「花は咲けども 山吹の 実のひとつだに なきぞ・・」と詠っているのは自然科学的には正確である。
余談だが、実が付かない八重のヤマブキは挿し木で増やすのが一般的だ。したがって、植えられている全国の八重のヤマブキは皆DNA的に同じのクローン。昔から人々が好んで栽培してきたのは花弁が多くボリューム感のある八重のヤマブキの方で人気があったため広まったようだ。
我が家の山のこの一重ヤマブキは、近くの川の土手に自生していたものを数年前に移植したものだが、しっかり根を張り勢いよく広がってきている。八重も一重もどちらもそれぞれに趣があり良いものだ。
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