2024年9月8日日曜日

今年は倒れた稲が多い

昨日こそ 早苗とりしか いつの間に 稲葉そよぎて 秋風の吹く
                (古今和歌集 読み人知らず)
=>>昨日、早苗を取って植えたばかりであるのに、いつの間に稲葉がそよいで秋風が吹くのであろうか。

新米が出回り始める時期となった。だが巷間では「米不足」とのニュースが囂しい。
品薄とか無くなりそうだと耳にすると、いきなり不安が極度に急激に高まる日本人の習性。

農家だから米は手元にたんまりあるのだろうと考える向きもあろうが、決してそんな事はない。自家消費分と個人的な販売ルート分を除いては出荷してしまうため収穫期を除いて余分な米は手元にないのが普通である。よく考えれば理解できるはずだ。
生産の現場と消費者の距離が遠くなって久しい。食べ物を口にできるまでにどれだけたくさんの人(生産・流通・販売の業者)が携わり、苦労があるのかが想像できなくなっている人が多いようだ。
米に限らず農産物は工業製品では無いので、需給を見てタイムリーな生産=増産をすることはできない。
特に米(水稲)は作付け準備から収穫まで長期間にわたり、その間の自然環境の影響を著しく受けるということがある。それらの対策をするにしても限度がある。今年でいえば、台風の強風、多雨、異常高温がある。それらをなんとか乗り切っての稲刈りだ。
今年は特に稲が倒れた田んぼが多いように感じる。

倒れた稲の刈り取りは時間との勝負でもある。稲穂が湿った土や水に触れていると発芽してしまうからだ。そしてベタッと完全に倒伏してしまった稲は機械ではなかなか刈取り出来ないから厄介だ。
大型の高性能機械(コンバイン。収穫:稲刈機能と脱穀機能と選別:籾だけの取出し機能が備わった)だとパワーがあるので無理やり処理ができるのだろうが、小型のバインダー(刈取ってヒモで束ねるだけの機能)では極めて難しい。
なので人力でひと株ずつ刈り取って縛ることになる。泥濘で悪戦苦闘する。
これぐらいは大丈夫かと考え、ちょっと無理してバインダーを入れると稲穂も、田んぼも、機械そのものもが「よぐよぐ」(=悪い状態)になる。合わせて生産者のメンタルもだ。
我が家でも(部分的ではあるが)倒れた稲と泥濘に苦労しながら稲刈りを続けている。

いま至るところで見られる稲刈り作業。見事にキレイに全面倒伏している田んぼも目立つ。
田んぼで稲刈り作業を見かけたら、作業の苦労を少しだけ思い出してくれたら幸いである。
すぐに食べられる状態のキレイな白米は、そんな姿では田んぼに置かれていないのだから。

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