常陸大宮市が誕生して今年10月で20年経つ。市では市制施行20周年の機運醸成のプレ事業として、市内にある温泉・温浴施設の無料「利用券」を市民一人あたり2枚配布してくれた。
「ささの湯」は一番近くにあることもあって普段でもしばしば利用している。特に寒くて体が芯から冷えてしまった時などは、サウナに入って心身をリセットしている。とても有難い存在だ。とくに夕方4時過ぎると入浴料が安くなるので、近隣のリピーターでたいそう混みあう(かくいう小生も、割引価格となるその時間帯を待って出かけている一人ではある)。この利用券のおかげであろう、今日も大変混みあっている。
♨ ♨ ♨ ♨ ♨
屋外にある半露天風呂は開放的で眺めも良い。眼下を流れる緒川のせせらぎの音や小鳥のさえずりを聞きつつ湯に浸かる。外気の冷気が火照った体にはとても心地よい。視・聴・触・嗅で楽しめる。自宅風呂ではけっして味わえない爽快な気分だ。
願わくばこのシチュエーションで、わずかにでも硫黄の匂いがしたり湯の花が浮いていたりすると最高だが、それは望みすぎ。ここの湯は「温泉」の定義に該当していないので、沸かし湯の単なる風呂=入浴施設でしかない。ではあるが名湯(たとえば秋田県にある有名な乳頭温泉のような白く濁ったお湯で硫黄の匂いに満ち溢れる露天風呂
)に浸かっているのだと妄想しつつ目を瞑って雑念を払いのけるとここも立派な温泉になる。
屋内のいくつかある大きな湯舟は社交の場でもある。知り合い同士が楽しそうに会話している姿もよく見かける。ロビーの休憩コーナーもしかり。畳敷き大広間のレストランのテーブル席もしかり。いたるところで「いやっ、ど~も」とか「かえってど~も」とかのイバ弁が飛び交っている。幼子たちは畳を走り回って転んで騒いでいる。でもこれも大丈夫。だれも嫌な顔などしない。ここに集いし者は皆寛容な心を持ち合わせていて、(ここはみんなが安心して寛げる場所だという)おなじ価値観を共有する仲間だ(と思う)。ここではすべてが平等で上下も肩書も男女も関係がない。「お湯」は人の心まで温めてくれる。
そしてこの幼子たち、少年少女たち。父母・祖父母に連れてこられ、共に湯に浸かりレストランで車座になって食べた食事など楽しい記憶・思い出は彼らのココロにずっと残り続け、素敵な財産となることだろう。たとえ将来、学業や就職、結婚で常陸大宮市を離れることがあってもだ。
遠くにある有名な温泉もそれはそれでよい。だが近隣にこんなワンダーランド・アミューズメントスパがある。ささの湯に薬効はなくとも、地元の老若男女・善男善女のココロを解きほぐしコミュニケーションを活発にし、明日への力をふつふつと湧きあがらせる不思議な力がたっぷりとある。