谷津田が広がる付近の山あい。
入り組んだ谷の間のその一画に、少ないながらも湧き水が出ている小さな水溜りがある。落葉が大量に沈んでいて魚が泳ぐ回れるほどスペースはないので魚はいない。
ここに昔から生息しているのが「ヤマドジョウ」だ。これは我々が使う通称で、正しくは「トウキョウサンショウウオ」と言うらしい。らしいと言うのは、この種には亜種がたくさんあるみたいで、実際のところよくわからないと言うのが正しい。姿だけで判断すると「トウキョウサンショウウオっぽい」だ。
姿はもう何十年も見てはいないが、今頃の春先に卵を産むため生息を確認出来ている。三日月型の独特の形をした卵嚢だ。
姿を見たいとも思う。おそらく幾重にも重なっている落葉を掬い上げれば見つけられるはずだ。だがこの静謐な生息環境を人間の勝手なエゴで乱すのは可哀想だ。
記録として画像に収め、またそっと水溜りの落ち葉の上に戻した。生息動物の多様性も里山の魅力の指標のひとつだと思う。